言語記号ははヒトの視覚を拘束する。文字は意味を内包し、その記号は音とイメージを作り出す。
ヒトは記号と音を結びつける事で、膨大なデータベースを構築し、どれか情報が欠け落ちていても補完する事ができる。
本作品では脳の初期視覚野のモデルとして、また機械のための特徴量抽出モデルとして使用されるガボールフィルタを用いて、映像を生成する。視聴者はその映像とスピーカーから出力される音声情報を手掛かりに、文字認識の臨界点を表示する映像から、脳内でその言語記号を補完する。
このプロセスは認知モデルを装置に落とし込むことで、ヒトが脳内で行っているであろう処理を、客観性を持ったかたちで認識する事ができる。特徴量や劣化音声から認知を行うさまは、ヒトを機械化させ、機械化されたヒトは言語記号を認識するという命令に従い、音と映像を情報という領域で一括りにして、ヒトらしさである感覚器官の分別を曖昧にする。
表示される言語記号はガボールフィルタのかけ方により、異なる記号でも、同一のものである見え方にする事ができる。そこで与えられる音声によりその言語記号の認識が決定され、フィルタが解かれていく事で、音声と言語記号が異なる場合に音と映像の矛盾が発生する。音と映像の矛盾は感覚器官の優位性を消失させる。これは視覚優位社会に対するアンチテーゼであり、人間の感覚の開放装置である。

2021 Introduction展 東京藝術大学取手校舎  
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